製造工程・柔軟素材ハンドリング
厚手の布を1枚ずつ分離し、2台のロボットで搬送するPoC
約1.5m四方の厚手の布が積み重なった状態から、最上層だけを分離し、2台の移動式双腕ロボットで左右の端を持ち上げて受け台へ運ぶPoCです。布にアダプターやバーを取り付けず、Galbot G1系の二指グリッパーを布面に沿わせて端部を挟む方法で、たわみ、層間の密着、左右の同期を検証しました。


対象部門
生産技術・繊維加工・ロボット導入部門
導入検討のきっかけ
厚手の布を積み重なった状態から1枚だけ分離し、2台のロボットで次工程へ運びたい
案件概要
- 対象工程
- 積み重なった厚手の布から最上層を1枚だけ分離し、受け台へ運ぶ工程
- 対象物
- 約1.5m × 1.5mの厚手の布。端部、たわみ、層間の密着状態が毎回変わる
- ロボット構成
- 移動式双腕ロボット2台。各ロボットは片腕を主動作に使い、反対腕は安全のため退避
- つかみ方
- Galbot G1系の二指グリッパーを使用。長いフィンガーを布の上下に沿わせ、面で支えるように挟む
- 動作範囲
- 1枚分離の確認、左右端の保持、同期した持ち上げ、たわみ確認、受け台への搬送、解放まで
- 実施期間
- 約10週間。布の状態確認、持ち上げ姿勢の設計、2台同期制御、評価までを短期PoCとして実施
- 公開範囲
- 顧客名、製品形状、布の用途、設備名、作業者情報は伏せ、作業の考え方が伝わる範囲で掲載
業務上の課題
厚手の布の搬送は、硬い部品のピックアンドプレースとは難しさが異なります。積み重なった布は層同士が密着しやすく、最上層を持ったつもりでも下の布まで一緒に持ち上げてしまうことがあります。さらに、左右のロボットが同じタイミングで持ち上げなければ、布がねじれ、片側に荷重が集中し、滑りや落下につながります。外付けの補助部材で布を固定すれば安定しますが、現場導入時の前準備が増え、自動化のメリットが薄れます。
設計方針
PoCでは、布にアダプターを付けず、ロボットの二指グリッパーで布端を扱う前提にしました。長いフィンガーを布面に沿わせ、上側フィンガーが布の上面、下側フィンガーが布の下面に沿う姿勢で閉じます。指先だけで挟むのではなく、布面に沿った長い接触面で支える設計です。左右2台は、布のたわみ量と左右の高さ差を見ながら互いの速度を制限する協調搬送として設計しました。
採用候補ロボット仕様
- 最大可搬重量
- 両腕で扱う場合は最大50kg
- 片腕で扱う場合の可搬重量
- 腕を前に伸ばした状態で32kg
- 作業高さ
- 最大2.3m
- アーム
- 7自由度。布端へ斜めに接近し、持ち上げ後のたわみに合わせて手首姿勢を調整しやすい構成
- 台車
- 全方向に移動できる台車。大きな作業台の左右に位置合わせし、受け台側へ移動できる構成
- 作業範囲
- 本体前方約0.7mを両腕でカバー
- 稼働時間
- 1回の充電で約8時間稼働。短時間でのバッテリー交換にも対応
- 連続稼働
- 24時間運用を想定した構成で検討
- 位置決め・安全
- カメラによる位置決め、全方向の障害物回避、安全接触バンパーを前提に検討
- バッテリー
- CATL製バッテリーを搭載する前提で検討
進め方と期間
Week 1-2
布の状態と人の作業を確認
布端の見え方、層同士の密着、作業者がどこを持ち、どの瞬間に「1枚だけ取れた」と判断しているかを確認しました。
Week 3-4
布端を持つ姿勢の設計
専用アダプターや長尺バーを使わず、Galbot G1系グリッパーの長いフィンガーを布端の上下に沿わせる姿勢を設計しました。
Week 5-8
1枚分離と2台同期搬送の実装
RGBカメラで布端、層間の影、持ち上げ候補位置を検出し、左右2台の接近、持ち上げ高さ、速度、たわみ量を同期させました。
Week 9-10
繰り返し評価と次の課題整理
1枚だけ分離できた割合、2枚取りの発生、滑り、左右高さ差、搬送位置のずれ、作業者介入回数、安全停止を記録し、次フェーズの課題を整理しました。
開発の詳細
検証エリアは、1.5m四方の布を広げられる大型アルミフレーム台、積層エリア、受け台、安全停止ボックスで構成しました。顧客名や実設備名は伏せ、作業の流れが分かる範囲で掲載しています。
1枚分離では、RGB画像で布端の影、折れ、下層との境界を見て、最上層だけが浮いた状態を確認します。完全自律に入る前のPoCでは、人が確認できる停止点も用意しました。
持ち上げ時は、G1系グリッパーの長いフィンガーを布端の上下に沿わせます。接触長を確保し、布端を軽く圧縮した状態で持ち上げるため、指先だけで挟む不安定さを避けられます。
持ち上げ動作では、まず左右で20〜30cmだけ上げ、布中央のたわみ、下層の追従、片側の滑りを確認します。問題がなければ、左右の高さ差と布面のねじれを抑えながら、低速で受け台へ移動します。
2台協調では、各ロボットを完全に独立して動かすのではなく、左右の保持位置、持ち上げ高さ、速度、停止条件を共通タスクとして扱います。どちらか一方の認識が不安定になった場合は、全体を低速停止し、布を保持したまま人の確認を待てる状態にしました。
評価では、成功/失敗だけでなく、2枚取り、滑り、布端の変形、左右高さ差、搬送位置のずれ、リトライ回数、作業者介入回数を分けて記録しました。AI認識、グリッパー姿勢、2台同期制御のどこを改善すべきかを切り分けられる形にしています。